2014年3月13日木曜日

電書とはなにか

 「電子書籍宣言」という電書がある。
 米光一成と小沢高広の共著(対談の書き起こし)。2010 年5月23日の発行だ。日本のAmazonがkindleストアを始めたのが2012年10月25日だから、2年半も先行している。日本語電子書籍のビジョンを示した発言として、記憶されるべき電書だ。
 米光さんがkindleを手に入れたのが2009年の10月。それ以来、「これでいったいどんなことができるんだろう、なにが変わるんだろう、っていうのをずっと考えて」いたそうだ。そして、12月には文学フリマで電書の対面販売を実行している。

 フリマやコミケって、「作ったモノを、作った人が、じかに相手に手渡す」ことができる場でしょ。そういうのが面白いなぁと、ずっと思っていた。買う側からしてみれば、好きな作家の人に「ファンです!」って伝えることができるわけで。
 それにいろんなチャレンジができる。過去の出版流通だと、できないことがたくさんある。本当は50ページで充分面白いのに、200ページはないと紙の本としてはまとまりが悪いとか。もっと売れるタイトルにしないと、とか。(中略)内容が値段を決めるんじゃなくて、部数とか印刷費とか、外側の都合で値段を決めちゃう。でも、書き手としては、パッケージの値段で売りたいわけじゃない。読みたい人に届いて、その対価をもらいたいだけだから。(中略)そういう本を電子書籍で作れば、在庫を抱える必要もないし、50ページの本だって作れる。読んでほしい人に向けて、しっかり届けられればオッケーってこともできる。  
抜粋:: 米光一成×小沢高広. “電子書籍宣言”。 iBooks.

まだ電子書籍を販売するシステムも整っていなかった頃に、自分たちでシステムを構築して、作成から販売してしまうところがすごい。ちなみに、文学フリマでの電書販売でも、渋谷のカフェを借りての電書フリマでも著者印税は100%だった。利潤を追求する企業にはできないイベントである。
 自由自在に電子書籍の技術を利用しながら人と人を結びつけていく。これが「電書的」な姿だ。

 小沢さんはこう述べている。

流通している情報は何も変わらない。変化するのは、描き手と読み手の間にあるもの、ですよね。
抜粋:: 米光一成×小沢高広. “電子書籍宣言”。 iBooks.  

 重要なのはコンテンツ。
 電書はその後、電書雑誌よねみつ→電書カプセルと進化しているが、筆者はまだ初期の対面電書も有効だと考えている。電書を作り、広げる方法論。電書を作るために必要な文章力、企画力、技術力。それをWorkshop形式で学び、コミュニティとして実行していくのが「電書Workshop」のコンセプトだ。

付記 電書について米光一成さんが自身で寄稿した文章はここで読めます。


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